日本は「外国人」が多く、もはや「移民国」とも呼べる。この記述を新書『「移民国家」としての日本──共生への展望』(宮島喬、2022年)で見かけた。一般的には逆のイメージがあるのではないだろうか。たとえば、日本は単一民族国家で、みなが日本語を使い、日本人は「外国人」にはあまりやさしくないというものだ。だが、前述した書籍によると、統計データ上はそうではないらしい。
日本は30年来、外国人等同社受け入れ国であり、さらに今や「移民国」(immigration country)となっている。だが、これを「然り」と認める日本人は多数派だろうか。そうとは思われない。
過去5年間(2014〜18年)の日本の新規外国人入国者は年平均で約43万人に上る。観光や商用(ビジネス)などの目的で訪れる短期滞在の外国人の数は除いて、である。この数が100万人を超えるドイツとアメリカは別格として、日本の新規外国人入国者数は、オーストラリア、カナダのそれを超え、イギリスと肩を並べ、フランスの2倍におよぶ。[…]
宮島(2022: 2)
ここで書かれた数値は、2014年から2018年の5年間ということで、コロナ禍が過ぎたいま、どの程度の数値なのか少し気になった。なのだが、どうにも新規外国人入国者数らしきものがパッと見つからない。30分強かけてようやく見つけたのでメモ書きとして残す。
まず、宮島(2022)でも元データとして参照されていたのが、OECD諸国の移民関連のデータがまとめられた“International Migration Outlook 2020”であった。リンク先のページには、各年のデータにアクセスするリンクがまとめられている。2024年3月現在、2023年のものが最新らしい。
HTML(Web): “International Migration Outlook 2023”
Web Book: “International Migration Outlook 2023”
探していた、新規外国人入国者数の推移と各国の比較データは、「Annex A. Statistical annex」内の「Table A. 1. Inflows of foreign population into selected OECD countries(OECD加盟国への外国人入国者数)」で確認できた。面白かったのが、確かに日本は2018年だとフランスよりも2倍多くの新規外国人入国者数があるのだが、コロナ禍の2021年だとフランスはほぼ横ばいの数値なのに対し、日本は大きく下がっている点だ。全体的な数値の変遷を見ると、わざわざ海を超えて来る人は減り、陸続きなど、近場の国へと流入する人が増えたのだろう。ただ、確かに日本は2018年時点ではOECD諸国のなかでも多くの新規外国人入国者を受け入れていた。
(Thousands) | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 |
---|---|---|---|---|
Australia | 186.6 | 155.8 | 137.5 | 153.8 |
Belgium | 119.7 | 129.5 | 101.6 | 122.4 |
Canada | 321.0 | 341.2 | 184.6 | 405.8 |
France | 259.9 | 268.5 | 208.5 | 250.4 |
Germany | 1383.6 | 1345.9 | 994.8 | 1139.8 |
Greece | 87.3 | 95.4 | 63.4 | 28.7 |
Israel | 28.1 | 33.2 | 19.7 | 25.5 |
Italy | 285.5 | 264.6 | 191.8 | 243.6 |
Japan | 519.7 | 592.0 | 220.6 | 80.0 |
Korea | 495.1 | 438.2 | 233.1 | 220.6 |
Netherlands | 191.0 | 215.2 | 170.6 | 208.1 |
Poland | 137.6 | 163.2 | 163.5 | 224.2 |
Spain | 560.0 | 666.0 | 415.2 | 456.6 |
Türkiye | 466.9 | 578.5 | 242.5 | 615.1 |
United Kingdom | 357.2 | 377.9 | 233.7 | 385.8 |
United States | 1096.6 | 1031.8 | 707.4 | 740.0 |
気になったのが、2023年のデータに2021年までしか掲載されていなかったこと。コロナが少し収まりつつあるように思えるいま、どのような数値が2022年から2024年のデータで見えるのか。気が向いたらまた調べようと思う。